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第80話  

「ありがとうございます、森岡さん!ありがとうございます!」佐藤六指は慌てて言った。

「よし!森岡さん、どこかで一杯やろう!」

「斉藤さん、どうぞ!」

二人は一緒に、富麗金沙の上階へと向かって行った。その後ろには、江城SCCの会員たちが続いていた。

行く前に、森岡翔は村上祐介の肩を軽く叩いて、先に帰るように言った。

富麗金沙の支配人は、慌てて先回りして、彼らを案内した。

そして、彼らは去って行った。

残されたのは、100人以上の野次馬たちと、佐藤六指が連れてきた100人以上の子分たちだった。

彼らは、まだ状況を理解できずにいた。

あれで終わり?

大激突が起こるんじゃなかったのか?

江城最強と謳われた六指様が、平手打ちを二発も食らって、しかも、謝罪するなんて?

多くの人々が、その場に立ち尽くす佐藤六指を見ていた。

「お前は江城の裏社会のボスじゃないのか?なんでそんなにヘコヘコしてるんだ?殴られて謝るなんて、情けないぞ」そう言っているかのようだった。

裏事情を知っている一部の人間を除いて、他の者たちは、この状況を理解できずにいた。

黒田は、床に倒れ込み、気絶したふりをした。佐藤六指に八つ裂きにされるのが怖かったのだ。

彼がいなければ、佐藤六指がこんな大恥をかくことはなかっただろう。今日のことは、すぐに江城中に知れ渡ってしまうだろう。

江城の裏社会のトップだった六指様は、人々の笑い者になるだろう。

もちろん、それは陰口でしか言えないことだった。

高木敏たち、クラスメイトも、森岡翔の去っていく姿を見て、現実とは思えなかった。村上祐介に、森岡翔が一体何者なのか、聞きたい気持ちは山々だったが、どう聞いていいのかわからなかった。

実は村上祐介も、状況が把握できていなかった。彼と森岡翔は、大学1年生の時、同じ部屋に住んでいた。4人のルームメイトの中で、二人は特に仲が良かった。

しかし、まさか森岡翔が、こんなすごい人物だったとは。今度、じっくり話を聞いてみなければ。

人混みの中にいた徳永芸と佐藤蘭は、顔を見合わせた。二人の目には、後悔の色が浮かんでいた。

高木敏に誘われて、村上祐介たちの寮でコンパをした時、少しでも森岡翔と仲良くしておけばよかった。そうすれば、今頃は江城で怖いものなしだったのに。

まさか、あんな大物だったとは。あの頃は、彼
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